7.猛暑とクーラー
jeudi 29 aout 2003, Paris / lundi 8 septembre 2003, Tokio up

もう秋です。
パリはすっかり涼しくなり、お天気は良いものの、空気はもう秋の気配です。
あの、異常な暑さが嘘のように、消えて無くなりました。
フランス全土の被害は相当なもので、
最終的に死者は5000人に上ると言われており、
農作物は枯れてしまい、経済にも影響が出ました。
病院でもベッドが不足状態、
遺体安置所も遺体を安置する場所がないという問題が起きていました。
(暑さだけが問題ではなく、それに対する政府の対応の遅さも
被害拡大の一部原因になっているようですが)
それに、まだ秋も深まっていないのに、
黄色や茶色になった木の葉がごっそりと落ちて、道をふさいでいます。
不思議だと思っていましたが、これも暑さの影響だそうです。

・・とのっけから穏やかではない話をしてしまいました。
8月にヨーロッパ全土を襲った異常な熱波のことは、
日本でもニュースで伝えられていたようなので、
もしかするとご存知の方も多いのではないかと思います。
今日はその猛暑について少しお話しようと思います。

パリでは異常な気温が約2週間続きました。
天気予報によると連日パリの日中の気温はだいたい38度で、
場所によっては40度のところもあったようです。
夫の姉の話では南フランスではもっと酷く、
6月から猛暑で雨が一度も降ってないと言っていたし、
ヴァカンス(南フランス)から最近帰ってきた夫の会社の人
(60歳くらいのムッシュー)も、
自分が今までに経験したことのない暑さだったと言っていました。
何度も繰り返しますが、この暑さは異常です。
ちなみに、私の持っている2002年度版のガイドブックによると、
8月のパリの平均気温は24度、
太陽さんさん、ヴァカンスで有名な南フランスのニースでさえ、28度となっています。
そういわれてみれば、去年の8月の暑さに対しての記憶がないので、
たいしたことはなかったんだと思います。
だから今年はやっぱり異常だったんです(しつこいですが)

普通、夏とはいえひどく暑くならないせいか、
フランスの一般家庭にはクーラーが普及していません。
パリでは、家庭どころか、メトロ、バスなどの交通機関、
レストランやお店、会社でさえ、ないところも珍しくありません。
(南フランスのトゥールーズでは交通機関など冷房化されていると聞きました)
フランスではクーラーは高級品で、一台、1000ユーロから1500ユーロします。
日本円で約、13万円から20万円くらいです。高すぎ!!です。
なんてことはない、ただふつ〜に涼しい風が出てくるだけのクーラーで、
この値段です。
とほほ・・誰も買わないというか、買えないというか・・。

しかし、クーラーが買えないことをぼやいていても仕方がない。
なんとか少しでも涼しくなるように、暑さ対策を頭をしぼって考えました。
(やけっぱちですが)
基本は、熱気が入らないように窓とカーテンを閉めて、
それ以外にフリーズパック(キャンプ用)を頭に乗せる、
たらいに冷たい水を張って部屋に置き、
暑くてたまらなくなったら足をつける、冷たい水でシャワーを浴びる、
などでしたが、どれも気休めにしかなりませんでした。
せめて扇風機でもあれば・・・そう思い、
大型ホームセンター、BHV(ベー・アッシュ・ヴェー)に買いに行ったのですが、
なんと、すでに売り切れでした。
まさか扇風機が売り切れとは考えておらず、
予想外の、しかも悪い展開にがっかりでした。
当然と言えば、当然ですが、
冷房器具売り場は(おそらく)扇風機を求める人であふれかえっていました。
BHVに限らず、フランス中の電化製品のお店で扇風機は売り切れ、在庫切れで
つまりもう、手に入らない状態でした!
今年フランスで扇風機が買えた人はラッキーだったというべきか、
賢かったというべきか・・。
唯一の望みだった扇風機への希望もあっけなく消えてしまいました。
(あの猛暑で扇風機が効果を発揮したかどうか今となっては疑問ですが)

それでも猛暑は続きます。
とにかく熱気がひどく、朝、目が覚めるとのどがからからで、
気分が悪くなったことも何度かありました。
字を書くのに、手を動かすだけで汗が吹き出て止まらないし、
とにかく座っているだけで疲れました。
昼はまだしも、夜暑いのが一番つらかったです。
フランスは湿度が低いせいか、
昼は暑くても夜になると一気に気温が下がって涼しい風が吹くのですが、
この時期は夜になっても熱気が収まらず、不眠症状態でした。
眠たいのに、暑さで目が覚めてしまう・・。
暑くなり始めた最初の頃は、
この暑さと戦ってやろ〜なんて意気込んでた私ですが、
3日、4日・・と暑さが続くとだんだん精神的にも参ってしまい、
食欲も落ち、食事はとうとう一日一回、夕食だけになりました(;;)

しかし、そんなある日、希望の光が・・・。
暑さが一週間ほど続いた頃、
夫の会社の上司が去年事務所で使っていたクーラーに問題があり、
あまり効き目がないけど、良かったら試しにどうかと運んできてくれたのです。
壁に取り付けるタイプのものではなく、床に置くタイプのものです。
あまり効き目がない・・それでも藁にもすがる気持ちでありがたくいただきました。
ないよりはマシです!
まずは、このクーラー、後ろにでっかいホースがついています。
これで熱気を外に排出するのでしょう。
だから必然的に窓のそばに置かないといけません。
(家の中で熱波を排出されると意味ないどころか、暑さで死んでしまいます)
効き目のほうはとういと、
リビング(と言っていいのかどうかわからない部屋ですが^^;)
の広い空間だと効き目があまりありませんでした。
クーラーの威力と、部屋の大きさが合ってないのでしょう。
そこで、狭い寝室に運び込むことに。
実際には寝室に入る手前の窓際に置きました。
実は我が家には寝室で暮らしているうさぎが一匹います。
うさぎも本当に暑そうでした。
実際私達人間より3度ほど体温が高く、
夏でも毛皮をかぶっているので相当暑かったと思います。
彼のためにもそこで生活するようになりました。
寝室の手前に置いたとはいえ、狭いのであっという間にクーラーは効果を発揮し、
涼しくて快適になり、生き返った気分でした!
省エネとか体が冷えるとかそんなこともすべて忘れてがんがん入れっぱなし状態。
夜も一晩中入れてました。
おかげで久しぶりにぐっすり眠ることができました。
さきほどがんがん入れっぱなし・・と書きましたが、
そんなに気温は下がらなかったというか、下げれなかったとういか、
28度くらいでしょうか。
調節機能がついてないんです。
それらしいボタンがついてはいましたが、
試したところどれも同じような感じであまり違いはありませんでした。
もちろんタイマーなんてのもないし、ただ涼しい風が出てくるだけのクーラーです。
それでも満足満足♪
もう、クーラー様様で、磨きまくりました。

しかし、喜んだのもつかの間、トラブルは起こりました。
水漏れしてじゅうたんが水浸し状態に!
そこでもう使っていない、小動物用のケージの中に新聞を敷き、
クーラーを入れてしばらくはしのいでいましたが、新聞では吸収しきれなくなり、
だんだん水が溜まってきたので、水を捨てなければいけなくなりました。
しかし、クーラーは重くて動かすのが不便なので、そうそう水を捨てに行けません。
なんとかしないと本体が水に浸かってしまします。
そこで、どこから水が漏れているのか詳しく調べてみることにしました。
その結果、クーラーの後ろの下のほうがパカッと開き、
そこに水が流れる細いチューブと、
それを受けるプラスチックの容器が入っていました。
そのチューブ、なぜか変な方向に飛び出ており、
これじゃ容器に流れていかないのは当然と思えるほど、変でした。
原因がチューブの変な向き、というのがわかったのでチューブを外に出し、
ケージはやめて、古くなって使っていないフライパンで受け止めることになりました。
これだと水がたまるとすぐに捨てにいけるし、
見た目もケージよりすっきりして良くなりました。
は〜一件落着。

と思った矢先、また新たなるトラブルが・・。
今度は水漏れより深刻で、なんとなまぬるい風が出ている!!
もしや、彼の上司が「問題がある」と言っていたのはこのことだったのでは・・。
これでは暖房だ〜!
疲れたのかもしれません。
そこで休ませるために、しばらく電源を切っておくことにしました。
一時間ほどたってもう一度つけてみると、ちゃんと涼しい風が出ました!
うっかりつけたままにしていると、いつの間にかなまぬるい風が出るので、
ある程度時間がたったら電源を切って、休ませるようにしました。
とにかく完全に壊れたわけではないので良かったです。
でもいつだめになるか・・、ひやひやしています。
そして、
いかに日本の電化製品が優秀であるかを実感したのは言うまでもありません。
(ごめん、うちのクーラー)
それでもこのクーラーに足を向けて眠れませんが・・(^^;

というわけで、最後の何日間かはクーラーの恩恵にあずかりましたが、
寝室での生活のため、ちょっと不便ではありました。
(贅沢を言ってはいけませんね)
食事もすべて寝室に運び、ナイトテーブルを食卓代わりにしていました。
夫は午後からは家にいるので、
これまたナイトテーブルにノートパソコンを置いて仕事をしていました。
私のコンピューターはもともと寝室にあるので、
これで2人と1匹が寝室にへばりついて一週間近くすごしたわけです。
客観的に考えると不気味ですね(^^;

こうして私達の暑さとの戦いは幕を閉じました。
そして、地球が温暖化していく危機感を身をもって感じました。
来年の夏も、再来年の夏もこんなのだったら
クーラーが高級品のフランスでの人々の生活はどうなるんでしょ。
この暑さだとフランス人たちも、クーラーの必要性を感じたに違いありません。
でも、太陽を求めてセーヌ川沿いで日光浴に励んでいる人たちを見ると、
やっぱり意識の違いがあるのかな。
問題はクーラーで解決するほど簡単ではないけれど、
一般人としては、クーラーのない猛暑の中での生活を考えると心配になります。
政府がどう対処したって、クーラーがなければ家の中の温度は変えられないし・・。
でもヨーロッパ全土が見事に冷房完備になったら、
さらに地球の温度が上がるかもしれない。
それを考えると、快適だろうけどやっぱり怖い。
「ヨーロッパは気温が低い」とこれからも思いたいし、そうあってほしい。
来年の夏は平年並みの気温に戻りますように!

Satoko


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